植物学者・牧野富太郎博士をモデルに描いた、話題のNHK連続テレビ小説『らんまん』。
物語の中盤、明治時代に主人公が学術研究員として台湾に渡ったエピソードが放送された週は、連日X(旧Twitter)にトレンド入り。テレビ視聴率も18.1%と放送開始から最高値を記録しました。
今日はドラマで一躍脚光を浴びた台湾の定番スイーツ愛玉子(オーギョーチ)と、名付け親の牧野富太郎博士について一緒に深掘りしてみましょう。
物語のモデルとなった牧野富太郎とは
日本の植物分類学の父
牧野富太郎博士は、土佐国佐川村(現在の高知県高岡郡佐川町)の裕福な造り酒屋の長男として1862年(文久2年)に生まれました。
幼少から独学で植物の知識を身につけ、貧窮や学歴差別に遭いながらも、情熱と使命をもって東京帝国大学(現・東京大学)の研究者としての地位を確立していきます。
日本の植物分類学において数多くの功績を残し、基礎を築いた牧野博士は「日本の植物学の父」と呼ばれるようになりました。
また牧野博士は、あの台湾の人気スイーツの原料「愛玉子(オーギョーチ)」に学名を命名した人物でもあります。
史実に残る“仰天エピソード”の数々
ドラマでは牧野博士の苦労と功績が描かれていますが、史実はそれ以上に波瀾万丈の人生でした。
その驚きのエピソードをいくつかご紹介します。
- 14歳 小学校中退。だけど天才少年
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幼少より学問所に通っていたため、すでに漢学・物理学・天文学・英語を体得していた富太郎は小学校が退屈で中退しています。
- 26歳 2人の妻に支えられていた
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史実では2歳下の従妹の猶(ナオ)が最初の妻。富太郎25歳の時、東京で一目惚れした14歳の少女が2人目の妻・寿衛(スエ)でした。ナオは富太郎の実家を継ぎ離婚後も富太郎の研究費を工面しています。
- 31歳 借金が常に数千万〜数億円(現在の価値)
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研究に莫大な金額を注ぎ込んだ富太郎。その額は裕福な実家を破産させるほどです。
- 48歳 貧しくとも子供13人の大家族
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多額の借金を抱え、大学助手の給金は15円(現在の価値で約50万円)と家計の厳しい富太郎でしたが、スエとの間には13人の子をもうけます(成人したのは7人)。
- 61歳 関東大震災の回想で驚きのひと言
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「もう一度大地震に逢ひたい 」
耳を疑う言葉ですが、地理や物理学にも明るかった富太郎は、学者の観点から自然災害にも大いに興味をもったようです。 - 86歳 昭和天皇に植物学をご進講
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「雑草という草はない」
植物学に興味をお持ちだった昭和天皇の名言として有名ですが、富太郎との交流の影響も大きかったと言われています。
牧野富太郎と台湾《愛玉子》の出会い
学術調査と学名《愛玉子》の成果
1895年(明治28年)に日清戦争が終結し、下関条約の締結によって台湾が割譲されました。
その翌年、総統府は東京帝大の学術調査団を台湾に招聘。富太郎も植物調査員として同行します。
1896年(明治29年)10月20日、富太郎は船で基隆港に入り、そこから約2か月をかけ高雄まで台湾を縦断するように植物の採集を実施しました。
当時はまだ日本への反抗勢力によるゲリラ活動や流行病も多く、大学側の資料には「採集調査はなかなか困難だった」と記されています。
そしてこの時、山間地に自生する台湾固有種のつる性植物《愛玉子》と出会ったのです。
クワ科イチジク属の愛玉子(オーギョーチ)はペクチンの含有量が多く、種子を水の中で揉み込むことでゼリー状に固まる珍しい植物。
台湾では清代より食べられており、売り娘さんの名前・愛玉にちなんで呼ばれるようになりました。
その後、日本の植物学者・牧野富太郎によって、世界共通の生物学上の学名が命名された、ということになります。
富太郎は台湾語発音を活かし、愛玉子(オーギョーチ)を“Ficus awkeotsang Makino”という学名で発表しました。
街にあふれる《偽物の愛玉》に注意!
現在、愛玉子をオーギョーチと呼ぶ台湾人は少なく、愛玉(アイユー)の名で親しまれています。
種子を揉むことでゼリー状となる愛玉子は、薬膳の世界でも身体の熱を取り除いてくれる食材として、古くから台湾人の生活に根付いています。
ところが近年、台湾でゼラチンや寒天のパウダーで作られた偽物の愛玉が出回るようになりました。
残念ながら日本国内の飲食店でも天然の愛玉に出会えることは稀です。
ただのレモン風味の即席愛玉ゼリーを本場の味だと思ってしまう人も少なくありません。
皆さんにもできるだけ天然の愛玉を食べていただきたく、天然と偽物の特徴をまとめました。
天然の愛玉 | 偽物の愛玉 |
熱に強く溶けない | 熱に弱く溶ける |
所々に花弁が入る | 混ざりものがない |
柔らかい弾力 | しっかりした弾力 |
液体の中で浮く | 液体の中で沈む |
ゼリー本体は無味 | ゼリー本体に甘味 |
カロリーが低い (本体はほぼゼロ) | カロリーが高い |
コストが高め | コストが天然の1/3 |
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『らんまん』の世界観広がる2つの施設
出身地〜高知県立 牧野植物園
「高知県立牧野植物園」は高知県出身である富太郎の功績を顕彰するべく、1958年(昭和33年)に開園しました。
園内の木造建築はデザイン性に優れているだけでなく、富太郎の意志を継いで周囲の豊かな自然の景観に溶け込むように配慮。
17.8ヘクタール(東京ドーム4個弱)もの広大な敷地に、約3000種近い植物がのびのびと生息しています。
終の棲家〜練馬区立 牧野記念庭園
「練馬区立牧野記念庭園」は、富太郎が1926年(大正15年)から生涯を終えるまでの約30年間を過ごした邸宅跡。
庭園では今も約300種の草木が大切に育てられており四季折々の美しさを感じます。
曾孫の方が学芸員として運営されているため、研究関連の資料はもとより、貴重な愛用品なども数多く展示されていて、チャーミングな富太郎の日常を垣間見ることができます。
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