先日、お墓参りを兼ねて夫の故郷・新竹へ行ってきました。
現在も親族の多くが新竹在住のため、台湾に帰省する度に顔を出しています。今回は足を延ばして北埔の散策を楽しんだあと、新竹に立ち寄りました。
新竹は世界最大の半導体メーカー「TSMC」をはじめとするサイエンスパークのイメージが強いかも知れませんが、美味しいものや歴史的価値の高い建築もたくさんあります。
今回はポイントを押さえて効率的に楽しめるように新竹ならではのご当地グルメ&観光スポットをまとめてみました。
「新竹都城隍廟」(第三級古蹟)
まず新竹といえば道教のお寺、新竹都城隍廟。
城隍廟の中でも地位の高い廟のため「都」の名称が付いています。
最大の特徴は、台湾でも珍しい屋台街と一体化している廟ということ。初めて訪れる人は誰もが驚きます。かくいう私もその一人でした。
清代の1748年に建立された廟内には、新竹の土地を司る城隍爺を中心として、人々の罪を裁く司法を司る六將爺・陰陽司公・六司など、数多くの神々が祀られています。
新竹都城隍廟は年間を通して行事も多く、城隍爺の誕生日が年3回(農曆2月17日、8月16日、11月29日)あり、特に3回目が賑わいます。また鬼月(台湾のお盆月間)である農曆7月は信仰行事が特に多く、神々を乗せた山車の行列が連日街を練り歩きます。
時折、廟内の屋台で食べている時に、そういった伝統行事を目にすることがあります。私も目の前で台湾オペラとも呼ばれる伝統戯曲「歌仔戯(ゴアヒ)」の奉納を見ることができた時は、食べる手を止めて見入ってしまいました。
「新竹都城隍廟」グルメ案内
いつの頃からか美食砂漠(グルメが少ない)などと揶揄されてきた新竹。でも実際は、あまり知られていなかっただけな気がします。
とくに観光客にとって新竹は、台湾の美食が一堂に集まる穴場の街ではないでしょうか。しかも城隍廟を取り巻く屋台のメニューはだいたい1品50元前後(200円ちょっと)とかなりお手頃です。
今回はこれだけは食べておきたい新竹ならではの定番グルメをご紹介します。ぜひお腹を空かして食べ歩きを楽しんでください。
柳家肉燥飯<肉燥飯>
夫が子どもの頃から通ってる店ですが、1931年創業と聞いて納得。100年近い歴史がある老舗でした。しかもいつ行っても賑わっています。
肉燥飯はいわゆる魯肉飯のことで南部での呼び方になります。ご飯の上にかける魯肉は、醤油のほか紅蔥頭や五香粉を創業当時から継ぎ足しながらその味を守り続けたもの。
サイズは大と小がありますが、食べ歩きを予定しているなら小サイズを選択するのが最善。地元の人は魯鴨蛋(煮玉子)やスープ等と一緒に頼むのが一般的です。
所在地:新竹市北區中山路75號
食べる時は店横のスペースか
暑い日は通路奥の室内へ!
阿城號米粉<炒米粉、魷魚肉羹湯>
風が強く「風城(風の街)」と呼ばれる新竹は米粉(ビーフン)の名産地。こちらの100年以上続いている老舗のビーフンは必食のメニューです。
定番の炒米粉は、歯ごたえのあるビーフンともやしの上に、ニンニクの効いた肉そぼろソースをサッとひと掛け。その早技を見ているだけでも味の期待値が上がります。
さらに一緒に食べたいのがとろみスープの魷魚肉羹湯。イカゲソ、魚や肉のツミレなどの具がぎっしり入っていて、サクサクの魚酥と呼ばれるトッピングとシャキシャキの筍の食感が良いアクセントになっています。烏醋と呼ばれるソースが底に入っているのでよく混ぜてくださいね。
所在地:新竹市北區中山路75號
鄭家魚丸燕圓<魚丸燕圓湯、肉圓>
こちらも100年以上続く老舗。名物の魚丸燕圓湯は弾力のある白いツミレが魚丸、赤麹を使った赤いツミレが燕圓。創業当時から添加物なしの手作りを守り続けている優しい味のスープです。
また台湾語で呼ばれる不思議な見た目の肉圓(バーワン)は、ネギや筍を入れた豚肉餡をプルプルの生地で包んだもの。生地は米粉や片栗粉、サツマイモ粉でできています。
お肉が赤くて驚くかもしれませんが、これは紅糟という酒粕を使っているため。甘辛ソースに絡めて食べるその味はクセになる美味しさです。
所在地:新竹市北區中山路75號
苗楊冬瓜仙草絲<冬瓜仙草絲>
食べ歩きを満喫したあとのシメは、いつも廟の出入口付近の「苗楊冬瓜仙草絲」で定番の冬瓜仙草絲をデザートとしていただきます。
ほんのり甘い冬瓜茶に、かき氷のトッピングでも使われる仙草ゼリーが惜しみなく入っている一杯はとてもさっぱりしていて、初めて飲んだときからその美味しさに虜になりました。
冬にホットもいいけれど、仙草は体の熱を取る漢方としても知られており、暑い日にアイスでいただくと一気に涼しさを感じられるのでおすすめです。
所在地:新竹市北區西安街62號
【上級者編】西市汕頭館 總店
地元の人でいつも賑わっている老舗の「西市汕頭館」は火鍋が看板料理ですが、我が家は食べ歩きするので、あえて軽めの炒沙茶牛肉麵を選択。
「西市汕頭館」の味の秘密は自家製の沙茶醬。台湾人が大好きな沙茶醬は鍋のつけダレや炒め物の調味料として長く愛されてきました。
1949年創業の總店(本店)はかなり年季が入ってますが、その人気は確かなもの。じつは新竹市内に大きな支店が2店舗もあります。
この20年、總店で日本人を見かけたことはありません。好奇心旺盛な方はぜひトライしてみてください!
所在地:新竹市北區西安街70號
新竹の名産品・おみやげ
前述の通り、風が強くて有名な新竹。新竹米粉(ビーフン)をはじめとする名産品をご紹介します。
- 新竹米粉…風の強さが生む歯ごたえある麺
- 貢丸…肉を叩き弾力ある団子に。スープに◎
- 花生醬…濃厚な台湾産のピーナッツバター
いつも実家の媽媽からは
貢丸(ゴンワン)と
米粉(ビーフン)を頼まれます
肉類は日本に持って帰れませんが、私がいつも自分用に買って帰る「新竹福源」のピーナッツバターをご紹介します。
新竹福源(花生醬)
かつて馬英九前総統のお気に入りということで人気に火がついた「新竹福源」の花生醬(ピーナッツバター)。店内はまるで駄菓子屋さんのように商品があふれていてとても賑やか。
看板商品の花生醬だけでなく、ピーナッツを原材料としたお菓子や調味料が所狭しと並んでいます。
花生醬はピーナッツの顆粒(粒入り)・細緻(粒なし)がありますが、私は断然、顆粒派です(笑)。
所在地:新竹市東區東大路一段155號
ちなみに市内には似た名前のお店もありますが、それは近年の事業承継に関するお家騒動が原因。
先代のお子さん達がそれぞれ店を構えていて、味の印象の違いをまとめてみました。私は毎回、その時の気分で選んでいます。
- 新竹福源…先代の息子(弟)が継いだ本店
昔ながらの甘さがしっかりした味 - 新福源…先代の娘(姉)のお店
甘さ控えめでピーナッツの味が濃い - 海福源…先代の息子(兄)のお店
ローストされた香ばしい風味
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新竹のレトロ建築
地元の人にとっては当たり前すぎてあまり意識されていないようですが、新竹には素晴らしい歴史的建造物も多く点在しています。
グルメでお腹を満たしたあと、是非のんびりと見学してみてください。
新竹車站/新竹駅(第二級古蹟)
まずは新竹の玄関・新竹駅。現在の駅舎は日本統治時代の1913年に竣工した現存する台湾最古のもの。建築家・松ヶ崎萬長によるバロック様式とゴシック様式を融合させた設計で、クラシックな鐘楼が風格を感じさせます。
その歴史は清代まで遡ります。1885年に台湾が省になったことに伴い鉄道工事が計画され、台北・基隆に続いて駅が建設されたのが新竹でした。
2015年には、その共通点の多さから東京駅と姉妹駅として締結もされています。
所在地:新竹市東區中華路二段445號
竹塹城迎曦門/東門(第二級古蹟)
國定古蹟でもある竹塹城迎曦門は、19世紀前半に新竹に造られた東西南北の4つの門のうちの東門にあたります。日本統治時代の都市計画で各門が壊される中、東門城だけ残り後年修復。現在に姿を残すこととなりました。
夫がロータリー交差点となっている門を見つめ「子供の頃、よく東門に登って遊んでいたなぁ」と一言。50年前とはいえ國定古蹟に登るなんて!…今ではちょっと考えられませんね。
所在地:新竹市東區東門街中正路口
新竹州廳/新竹市政府(第二級古蹟)
日本統治時代の1926年に竣工した新竹州廳(=新竹市政府)。赤レンガの外観は一見すると西洋風ですが、屋根は日本風の瓦葺きという和洋折衷スタイルとなっています。
ホール内は白色で統一されており、優美な階段や照明が目を惹きます。さらに奥へ進むと同じく白壁のアーチ型通路が続きますが、驚くことに各部屋では現在でも通常業務が行われているようでした。
所在地:新竹市北區中正路120號
こんなに素敵な職場だったら
仕事もはかどりそう!
李克承博士故居(市定古蹟)
おすすめのリノベーションカフェでもある李克承博士故居は、元は1943年(昭和18年)に新竹在住の日本人経営者3名が共同で建てた社交のための会館でしたが、戦後に新竹初の医学博士となった李克承の邸宅となりました。
日本統治時代の建築技術の粋を集めたその造りは、高温多湿な台湾に合わせて風通しと暑さ対策が考えたれた設計となっています。
老朽化が進む中、2013年に1,200万元(約5,000万円)を投じて修復され、当時の姿が蘇ることとなりました。
所在地:新竹市北區勝利路199號
辛志平校長故居(市定古蹟)
日本統治時代に新竹中学校の校長宿舎として1922年(大正11年)に建てられたとされる辛志平校長故居。
戦後の台湾教育の立て直しに奔走した中国籍の辛志平は、校長就任の1945年から逝去する1985年まで居住していました。その後、放置されていたものが2002年に修復され、一般開放されることに。
敷地には建物が2棟あり、前方には当時の邸宅を様子を見学できる棟があり、後方の棟はレストランやカフェとして利用されています。
所在地:新竹市東区東門街32号
【おまけ】街全体が歴史の宝庫
新竹の街は其処彼処に歴史を感じさせる建築が残っているので、目的もなく散歩をするだけでも楽しく過ごせます。
実家の思い出の場でもある東門市場もシャッター街になりつつありましたが、近年、若いオーナー達が飲食店や雑貨店を開くようになって活気が戻ったことでも話題となりました。
昔ながらの雰囲気を大切に、残して、使う。
その心意気が感じられるのが新竹なのです。
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新竹へのアクセス
美食と歴史のラビリンス・新竹へは台北から在来線<臺灣鐵路>でわずか1時間。ぜひ気軽に日帰り旅行を楽しんでみてください。
(新竹駅から新竹都城隍廟への行き方↓)
新竹
■台北からのアクセス
台北車站→新竹站(約1時間)
台湾鉄路(在来線)<臺鐵>利用の場合
※「高鐵新竹」と「新竹」は別の駅です。
高鐵利用は早いですが新竹駅から離れているので、所要時間は在来線の臺鐵と同じくらいになります。